2021年3月11日に文春で総務官僚がNTTから接待を受けていたと報じられ、一躍話題になったNTT。
東北新社でも同様の接待問題が報道されましたが、東北新社とNTTでは少し事情が異なります。
なぜなら、東北新社は純粋民間会社なのに対し、NTTは1985年まで元々電電公社という公共企業体で、政府との繋がりがとても強い会社だからです。
今回の接待報道をより理解するためにも、NTTの民営化の歴史をおさらいしてみたいと思います。
電電公社からの民営化への歴史
電電公社の誕生
日本で初めて電信による通信が誕生したのは、1854年。
「黒船」でペリーが来日した際に日本政府に献上した電話機が始まりでした。
その技術に驚愕した当時の明治政府は、1868年に電信の官営を決定、すぐに通信サービスの提供を始めました。
そしてそこから約100年後の1952年、現在のNTTの前身となる「日本電子電話公社」が設立されました。
当時電電公社は「公共企業体」として、日本の通信インフラを支えていました。
「公共企業体」という言葉は現代ではあまり馴染みがないかもしれませんが、「国家から出資を受けながら、独立した法人資格を持ち、公共の利益のために経営される企業体」という意味です。
そして狭義では、民営化前の「日本国有鉄道」、「電電公社」、「日本専売公社」の3社を指します。
3社は、高い公共性、社会貢献性から、国からの出資を公的に認められていたわけです。
電電公社からNTTへ民営化
電電公社が誕生した約30年後の1985年、NTTの歴史の一番のターニングポイントである
「民営化」がなされました。
民営化とは、「一般民間企業になる」、つまり国の運営、出資をやめることです。
この1985年の民営化によって、電電公社の「一人勝ち」が終了、新規事業の参入が始まり、
日本の通信事業は自由競争の時代に突入しました。
NTTを語る上で欠かせない「NTT法」とは??
この電電公社の民営化に伴い制定されたのが、「日本電信電話株式会社等に関する法律」、
通称「NTT法」です。
このNTT法は、ざっくり言うと、「①自由競争を活性化させるためのNTTへの制限」と、「②公共サービスとしての維持」、「③公共企業体の名残」の3つがポイントです。
①自由競争を活性化させるための制限
民営化され新規事業の参入が可能になったとはいえ、NTTは今まで提供してきた電話回線等の設備を引き継ぐため、他社より圧倒的に有利であることに変わりはありません。
そこで、NTTは回線事業はできるが、プロバイダ事業には参入できないという決まりが作られました。
全国に通信網を持っているNTTがプロバイダまで一括で提供できてしまうと、他社の入る隙がなくなってしまうからです。
なお、現在はNTTグループのNTTコミュニケーションズ等がプロバイダ事業に参入していますが、このNTT法は基本的には「持株会社」と「東西地域会社」が対象となるため、法律違反にはなりません。
②公共サービスとしての維持
2つ目が、公共サービスとしての維持の側面です。
民営化されたとはいえ、NTTの通信網は当時から生活になくてはならないものとなっていました。
それが自由競争によって、例えば回線事業自体から撤退したり、利益率が悪いからと地方都市への提供を止めたりすると、生活者に大きな影響が出てしまいます。
そこでNTT法では、NTTは最低限の通信・通話サービスを全国一律に提供する義務が課されました。
電話料金の明細によく書かれている「ユニバーサルサービス料」というのは、実はこのNTT法が関係していて、電話料金の値下げが加速する中で、通信サービスを維持するために加入者が負担する決まりになっている費用なんです。
③公共企業体の名残
3つ目が、公共企業体の名残です。
具体的には、
・政府による株式の所有割合を1/3以上とする
・役員の異動や事業計画の策定、利益の処分、定款の変更、他事業者との一体的なサービス提供などについては総務省の認可が必要とされる。
・事業としての公共性・公益性から、職員の賄賂の収受を禁じるなどの「みなし公務員」に近い規定
などがあります。
民営化したとはいえ、このように一般企業とは違い、政府と非常に密接な関係にある特殊な会社であると言えます。
各事業を子会社化・巨大な「NTTグループ」に
通信技術の発達によって、アナログ通信からデジタル通信、移動体通信やインターネット接続など、NTTの提供範囲が拡大していく中で、NTT内で各事業が子会社化されていきました。
NTTグループの変遷は、以下に簡単にまとめると以下のような流れです。
1988年 | NTTデータを分社化 |
1991年 | NTTドコモを分社化 |
1999年 | NTTが持株会社化。NTTコミュニケーションズ設立。 |
2020年 | ドコモがNTTの完全子会社に。 |
こうして、固定電話の提供から始まったNTTは巨大な「NTTグループ」となっていきました。
おわりに
いかがだったでしょうか。
NTTは過去公共企業体だったこと、そして民営化後も株式の3割は政府が所有しているなどの事実を知っているのと知らないのとでは、接待問題への見方も変わってきますね。
通信サービスという公共性の高い事業性から、総務省との繋がりが深いのは避けられないとは思いますが、民営化の意味を今一度考え、透明性を持ってほしいところです。
コメント