ここ数年、テレビや新聞で”DX”という言葉を聞く機会が急速に増えました。
企業も盛んにDXを進めることを目標として掲げ、セミナー等も開かれています。
しかし、実際の言葉の意味をきちんと知らず、やたらとカッコよさげなこの言葉だけ先行しているケースがとても多いように思います。
そこで、この記事ではDXが何を指すのか、定義から丁寧に解説していきます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
そもそもDXとはどういう意味なのでしょうか?
DX=Digital Transformation なら、DXじゃなくてDTじゃないか!と突っ込みたくなった人もいるんじゃないかと思いますが、XはTrasnfomationの接頭辞である「Trans」を英語圏ではxと訳すことから、この略称になっています。
DXとは、一言で言うと社会や企業をデジタル技術で変革させることです。
この言葉は、2014年にスウェーデンのウメオ大学教授エリック・ストルターマン氏によって「デジタル技術が浸透することで人間の生活のあらゆる面で引き起こす、あるいは良い影響を与える変化」を指すものとして提唱されたのが最初です。
もともとは、今よく使われている意味よりも、もっと広い社会全体の変化を指す言葉でした。
ビジネスシーンで用いられる”DX”は?
同じDXでも、近年よくビジネスシーンで使われる場合の意味は少し異なります。
経済産業省は、企業のDXについて、以下のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
引用元:経済産業省-「DX 推進指標」とそのガイダンス
企業の優位性を確立するために、データやデジタル技術を活用してビジネスを変革していく、というのがポイントです。
企業の優位性を確立するため、という目的のためのDXなので、前述の意味より少し狭義ですね。
DXが注目されるきっかけにもなった「2025年の壁」問題とは?
次に、DXと合わせてよく語られる「2025年の壁」についても触れておこうと思います。
これは、平成30年に経済産業省によって発表された、DXレポートで使われた言葉で、多くの経営者に衝撃を与えました。
その内容は簡単にまとめるとこうです。
2025年までに旧システム刷新を行えなかった場合…
①市場の変化に合わせて柔軟かつ迅速にビジネスモデルを変更できず、デジタル競争の敗者になってしまう
②システムの維持管理費が高額化、IT予算の9割以上に
③保守運用の担い手が不足することで、サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失などのリスクが高まる
➡︎最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)
それまで、AIやIoTといった最新の技術を活用してビジネスを変革していくのは、どちらかというと少数精鋭のベンチャー企業、という風潮があったように思います。
しかし、このレポートで「2025年の壁」問題を思い知り、大企業の経営者たちものんびりしていられないと慌ててDXへと舵を切り始めたことで、DXへの注目がさらに高まることになりました。
企業が陥りがちな罠:最新技術の導入=DXではない!
DXの定義、重要性についてはここまでの解説で理解いただけたかと思いますが、そうなるとじゃあ実際どうすればいいんだ!という疑問が湧いてくると思います。
ここで企業が陥りがちな罠が、「AIだ!データ活用だ!ベンチャーと協業だ!」と最新技術の導入に躍起になることです。
もちろんそれ自体が悪いことではありませんが、ここでもう一度企業のDXの定義を振り返ってみましょう。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
企業のDXの目的は、「ビジネスモデル、業務、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」です。
周りを見て慌ててAIやIoTを導入しても、企業を変革し、競争上の優位性を確立することはできないのです。
例を挙げてみましょう。
これまで毎日出社が当たり前だった大企業が、DX推進だ!と一念発起し、最新のシステムを導入して社員がリモートワークできる環境を整えられたとします。
しかし、「急にリモートワークできるようになったよ、みんなしてね!」と言われても、周りがみんな出社していたり、リモートワーカーとしてのスキルがなくて出社の方が仕事の効率がいいとなると、気づけば「あれ、結局みんな出社してるじゃん」という状況に陥ってしまいます。
これは、DX推進のための手段であるツール導入に注目するあまり、そのツールを定着させるための組織改革、企業文化・風土の変革という側面が抜け落ちてしまっているのです。
これではせっかく大金をかけて技術を導入しても、意味がありませんよね。
企業のDX成功のコツは、「To-Be像」をしっかり定めること
では、どうすれば企業のDXを成功させることができるのでしょうか。
成功のコツは、企業の「To-Be像」をしっかり定めることです。
まずは、DXの目的、つまり、どんな働き方ができる企業になりたいのか、どんな面で他社と比べた優位性を確立したいのか、などを社内で議論して固めましょう。
その際、経営層だけでなく、一般社員からも参加を募ってプロジェクトを立ち上げるのもとてもオススメです。
「To-Be像」を定める段階で社員にも当事者意識を持って参加してもらうことで、企業文化・風土の変革にとても効果があります。
そして「To-Be像」をしっかり定められたところで、やっと技術の選定、導入に進みましょう。
目的がきちんと定まっていれば、技術の選定、導入にあたっての根拠やTo-Doもはっきりし、
スムーズに進めることができるはずです。
おわりに
いかがだったでしょうか。
DXのそもそもの定義、そして企業のDXを成功させるコツまでご紹介しました。
DXに限らず言えることですが、大切なのは「目的と手段をはき違えない」ことです。
自社のDXが本末転倒になっていないか、是非今一度考えてみてください。
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